低用量ピルは避妊に用いるものですが、卵巣がんや子宮体がんの予防効果があるといわれています。卵巣がんの罹患率は、昭和60年代と比べて増えていてます。子宮がんは、2012年は女性のがん患者数が多い部位第5位にランクインしています。
男性に比べて女性は卵巣や子宮のがんになりやすいのです。
がんのリスクを減らすには生活習慣を整えることが大切ですが、低用量ピルもがんのリスクを低下させる働きが期待されます。では、どうして低用量ピルの服用でがんのリスクが低下するのでしょうか。
低用量ピルとは
ピルとは女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンを含んだ内服薬のことをいいます。ピルには大きく分けて2つの種類があります。
1つは中用量ピルです。これは、月経トラブルなど婦人科系疾患の改善のために用いられます。
もう1つは低用量ピルです。こちらは避妊目的に使用をします。ピルを飲むと吐き気、頭痛、乳房の張り、倦怠感などの副作用が現れることがあります。低用量ピルは副作用を軽減したものです。避妊目的に使用をしますが、生理痛の軽減、生理時の出血量の軽減などの働きもあります。
低用量ピルの働き
低用量ピルには女性ホルモンが含まれていて、服用をすると妊娠をしたような状態になります。妊娠をすると排卵がなく生理もなくなります。ピルを服用して妊娠したような状態にすることで、排卵が抑制されます。また、子宮内膜の肥厚が抑制されるので着床も抑制されます。
低用量ピルは21日間続けて錠剤を飲みます。一度に大量に飲んでも効果はなく、続けることで避妊効果が期待できます。避妊率は高く約99%です。
卵巣がん、子宮体がんとは?
卵巣がんとは卵巣にできる腫瘍のことをいいます。腫瘍には良性と悪性があり、悪性のものを卵巣がんといいます。原因ははっきりとはわかっていません。しかし、ホルモン補充療法を受けていたり、排卵誘発剤を使用していると子宮がんのリスクが高まるといわれています。
子宮体がんとは子宮の体部にできるがんです。子宮は上部がふくらんでいて、下部が細くなった形をしています。上部の膨らんだ部位を子宮体部、下部の細くなった部位を子宮頚部といいます。子宮体がんは女性ホルモンが関係をしています。
女性には月経周期があり、月経はエストロゲンとプロゲステロンという2つのホルモンのバランスで起こります。月経が終わってから排卵日まではエストロゲンの分泌量が増えて、妊娠に備えて子宮内膜を厚くします。受精がなかった場合、プロゲステロンの働きで子宮内膜がはがれ落ちて排泄されます。
エストロゲンの分泌量が多いと子宮内膜が異常に増殖をします。子宮内膜増殖症になり、子宮体がんに変化する可能性があります。また、子宮内膜がきれいにはがれ落ちないと、古い内膜が残って肥厚をして、子宮体がんのリスクを高めます。生理不順があると古い内膜が残って子宮体がんのリスクが高まることが心配されます。
どうしてがんのリスクを低下させる?
低用量ピルを服用することで、ある種類のがんのリスクを減らすことがわかっています。リスクが減るがんとは、卵巣がんと子宮体がんです。卵巣がんの原因ははっきりしていませんが、卵巣は排卵のたびにストレスを受け、これが原因ではないかと考えられます。
低用量ピルを使用すると排卵が抑制されるので、卵巣のストレスが軽減します。このことから低用量ピルは長く使うことで、卵巣がんのリスクを減らす働きが高まります。5年間継続して服用をしている人の場合30%低下、10年間継続をしている人は40%低下すると報告されています。
低用量ピルには子宮内膜の肥厚を抑制する働きがあります。子宮体がんは子宮内膜が異常に増殖をして子宮内膜増殖症となり、そこからがんへと発展する可能性があります。子宮内膜の増殖を抑えることで、子宮体がんのリスクが低下すると考えられます。また、低用量ピルを服用することで子宮内膜がきれいにはがれ、古い内膜の蓄積を予防できます。
正しく服用することが大切
低用量ピルは正しく服用をすることで効果を得られます。21錠タイプと28錠タイプがあり、どちらも女性ホルモンを含んだ錠剤を飲むのは21日間です。28錠タイプは、飲み忘れがないように7日間ホルモンを含まない偽薬を飲みます。飲み忘れがないように気をつけてください。
また、低用量ピルで副作用がでることがあります。飲み始めて3か月間は副作用が出やすいので、体の変化に注意をして何か異常を感じたら医師に相談をしましょう。
低用量ピルだけに頼るのは禁物
低用量ピルが卵巣のストレスを軽減、子宮内膜の肥厚を抑制することなどにより、がんのリスクを減らすことが期待できます。低用量ピルで卵巣がんや子宮体がんのリスクが減るといわれていますが、がんを予防するためには生活習慣の見直しも大切です。がんは肉類中心の欧米食でリスクが高まるといわれています。
肉類ばかりでなく、魚や大豆からタンパク質を摂取したり、野菜や海藻を豊富に食べるようにしましょう。肥満もがんのリスクを高めるので、体重管理にも気をつけてください。