「低用量ピルの効果」 一覧
低用量ピルといえば、避妊に使うものというイメージが強いかもしれません。じつはそれだけではなく、体内の女性ホルモンのバランスを整えることで、さまざまな効果が得られる薬なのです。低用量ピルで効果が得られる理由と、低用量ピルで得られる効果について詳しく見ていきましょう。
低用量ピルってどんなもの?避妊以外の効果とは
低用量ピルは、服用することで女性ホルモンのバランスを調整することができます。避妊薬のイメージが強いですが、そのほかにもさまざまな効果があります。大きく分けると以下のようなものです。
・肌荒れやニキビの解消効果・生理周期の調整・妊娠しやすい体になる
ひとつずつ、詳しく解説していきます。低用量ピルでもたらされる効果を知る為に、まず女性の身体のしくみについて改めて説明します。
女性の体のしくみを知ろう!女性ホルモンの役割とは?
女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロン。この2つは、生理や妊娠に大きく関わるホルモンです。生理はおよそ28日〜36日周期で繰り返され、そのちょうど真ん中である生理後14日〜18日で排卵が起こります。排卵前はエストロゲンが、排卵後はプロゲステロンの分泌が盛んになります。
エストロゲンは女性らしい体を作り、排卵を促すホルモン。エストロゲンは着床や妊娠に向けて子宮内膜や体温を調整し、赤ちゃんを迎える準備をするホルモンです。通常はエストロゲンが優位に立っていますが、生理前はプロゲステロンが優位になり、肌荒れやPMSといったさまざまな症状を引き起こします。
低用量ピルは女性ホルモンのバランスを調整する
低用量ピルは、エストロゲンとプロゲステロンの2つの女性ホルモンを人工的に合成させ、配合した薬です。ピルを飲むことで排卵前にプロゲステロンが体内に入ると、性腺刺激ホルモンの分泌が弱まって排卵や生理が起きなくなります。生理が来れば、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量は一旦弱まります。これが通常の状態です。
しかし、ピルを飲むことで体は「妊娠している」と思い込み、ホルモンバランスが一定に保たれるようになります。ピルには、ホルモンバランスの急激な変化を防いで調整する役割があるのです。
低用量ピルで得られる効果1・避妊効果
ピルは元々、避妊を目的として服用される薬です。使用時の避妊率は99.7〜99.9%と高い数字を誇ります。ピルの服用による避妊効果は、大きく分けて3つあります。
1、排卵が起きなくなる
妊娠は、排卵によって出てきた卵子が精子と出会い、着床して受精することで成立します。ピルを飲むことで排卵そのものがなくなるため、ほぼ確実に避妊が可能です。
2、子宮に精子が侵入しづらい状態になる
子宮の入り口には頸管(けいかん)粘液があり、さまざまな感染を予防する役割を果たしています。ピルを飲むと頚管粘液の量が減って粘着性が増えるため、万が一精子が体内に侵入しても子宮内に入りづらい環境を作ってくれるのです。
3、受精卵の着床を防ぐ
通常、厚くなった子宮内膜が剥がれ落ちることで生理が起きます。ピルを飲むと子宮内膜が厚くならず、受精卵が子宮に侵入したとしても着床しづらい環境になります。
低用量ピルで得られる効果2・生理痛・PMSの症状を緩和
生理痛やPMSに悩む女性は多く、仕事や家事に大きな影響を及ぼします。しかもそれが毎月やってくるとなると、少しでも症状を緩和したいというのが女性たちの本音ではないでしょうか。低用量ピルを使えば、これらの症状を緩和することができます。
生理痛の緩和に低用量ピルが効くのはなぜ?
生理が始まると、子宮内でプロスタグランジンという物質が分泌されます。これは子宮を収縮させて経血の排出を促すもので、分泌量が多いほど子宮の収縮が激しくなります。プロスタグランジンの分泌量はピルを飲むことで減るため、痛みも緩和されるのです。
低用量ピルで生理の出血量も減少する
エストロゲンの分泌量が多く、子宮内膜が厚くなるほど、毎月の生理の出血量は増えます。ピルを飲むとホルモンバランスが安定し、出血量もだんだんと減っていきます。飲み続ければ、生理が2日〜3日で終わってしまうことも珍しくありません。
>h3>低用量ピルを使えば生理不順の改善ができる
通常の生理は28日〜36日の間で繰り返されますが、その周期が不定期で安定しない状態が生理不順です。生理不順には、ストレスや病気、ダイエットのしすぎによる無排卵などさまざまな原因が潜んでいます。ピルでホルモンバランスが整うと、生理周期を安定させる効果が期待できます。
低用量ピルは1シートを28日周期で飲み続ける薬です。必然的に生理による出血(消退出血)も28日の周期で安定し、「そろそろ来るかも」「まだ来ない」といったストレスからも解放されます。
PMSの緩和に低用量ピルが効くのはなぜ?
PMS(月経前症候群)は、生理が始まる3日〜10日間の間、心と体にさまざまな症状が出るもので、生理が始まると収まります。小林製薬の2012年の調査によると、女性の約86%がPMSを経験しているそうです。低用量ピルは、PMSの緩和にも役立ちます。
PMSってどんなもの?
PMSの代表的な症状には次のようなものがあります。PMSだという自覚がなくても、思い当たる症状がある人も多いかもしれません。
・ちょっとしたことでイライラする
・理由もなく不安や憂鬱な気分になる
・泣きたくなる
・情緒不安定になる
・集中力がなくなる
・むくみやすくなる
・肌荒れやニキビが出る
・胸が張って痛みがある
・体が重く、だるくなる
・体重が増える
・食欲が増える
・頭痛や腰痛
・眠気がひどくなる、または不眠がちになる
PMSが起きる理由とは
PMSが起きる理由には、女性ホルモンが大きく関わっています。
1、女性ホルモンの分泌量の急激な変化
2、プロゲステロンの分泌量が増えることによる影響
低用量ピルでPMSが緩和されるのはなぜ?
低用量ピルを飲むことで、ホルモンのバランスが自然な状態で保たれるようになります。ホルモン分泌量の急激な変化や、片方のホルモンだけが増えすぎることがなくなるので、PMSの症状もだんだんと緩和されていくのです。
低用量ピルで得られる効果3・婦人系疾患の治療・予防効果
低用量ピルは、子宮内膜症や更年期障害・貧血・子宮がんといった、女性特有の病気の治療や予防にも役立ちます。
子宮内膜症ってどんな病気?
子宮内膜症とは、本来は子宮の内側にある内膜が何らかの原因で子宮以外の場所にできてしまう病気です。月経痛がひどい・出血量が多い・性交痛がある場合は、子宮内膜症が疑われます。20代〜40代の女性に多く、放置すると不妊の原因にもなります。
子宮内膜症の治療に低用量ピルが効くのはなぜ?
低用量ピルを飲むと子宮内膜が厚くならないため、生理痛の緩和や出血量の減少につながります。また、体内のホルモン分泌量が減ることで、子宮内膜症の進行を抑えることもできます。低用量ピルは基本的に保険適用外ですが、子宮内膜症の治療目的であれば保険適用も可能です。
更年期障害ってどんなもの?
更年期障害は、40代〜50代の閉経前後の女性に起きるさまざまな症状の総称です。のぼせや多汗・めまい・頭痛といった身体的な症状から、イライラしやすい・不眠といった精神的な症状が幅広く現れます。これらの症状は、閉経が近くなり体内の女性ホルモンの分泌量が一気に低下することで起きます。
更年期障害に低用量ピルが効くのはなぜ?
まだ生理がある女性なら、低用量ピルを飲むことで体内の女性ホルモンの濃度を上げ、症状を緩和することが可能です。ただし、症状がひどかったり、すでに閉経していたりする場合は、低用量ピルよりもホルモン補充療法(HRT)が主に使われます。
低用量ピルは年齢が上がるほど血栓症のリスクが高まるため、40代以降の女性の場合はほとんど処方されません。主に更年期の症状が30代で出る「プレ更年期」の場合に使われることが多いでしょう。
鉄欠乏性貧血ってどんなもの?
体内の鉄分が減ることによって起きる鉄欠乏性貧血は、特に女性に多く見られる症状です。女性は月に1度生理があることで、鉄分が流れ出す量が多いためです。さらに子宮内膜症や子宮筋腫の影響で出血量が多い人ほど、貧血になるリスクは高まります。
貧血があると顔色が悪く、動悸や息切れがある、疲れやすいといった症状が出ます。しかし、貧血がゆっくりと進行しすでに慢性化してしまっていると、本人が気づきにくいこともあるため注意が必要です。
低用量ピルで鉄欠乏性貧血が緩和されるのはなぜ?
低用量ピルを飲むことによって、毎月の生理の出血量を減らすことができます。そのため、鉄分の流出を防ぎ、鉄欠乏性貧血の進行防止や予防が可能になるのです。
低用量ピルは子宮がん・卵巣がんの予防になる
子宮の入り口にできる子宮頸がん・子宮の奥にできる子宮体がんは、いずれも低用量ピルで予防できます。低用量ピルを飲んで毎月の生理が安定することでがん細胞が剥がれやすくなり、子宮内膜が薄くなることで発生のリスクも低下します。
また、低用量ピルを飲んでいる間は排卵がないため、卵巣の機能を休ませることができ、卵巣がんの予防や卵巣嚢腫の減少につながります。
乳がんの場合は使えないので注意
低用量ピルは、すべてのがんに効くというわけではありません。乳がんはエストロゲンの影響を受けやすく、乳がんの原因となる細胞はエストロゲンと結びつくことで増えてしまいます。そのため、これまで乳がんにかかったことがある人や、現在乳がんに罹患している人は使うことができないので注意しましょう。
排卵障害って?低用量ピルが効くのはなぜ?
排卵障害とは、何らかの原因によって毎月あるはずの排卵が正しく行われない症状です。不妊の原因の約3割は、排卵障害が原因だとも言われています。低用量ピルを飲むと、体は妊娠しているときと同じホルモン状態になり、卵巣や排卵機能が休止します。何ヶ月か続けたあとに飲むのをやめると、自然に排卵が再開することがあります。
骨粗しょう症って?低用量ピルが効くのはなぜ?
骨粗しょう症は、更年期後の女性に多くみられる病気です。閉経後に女性ホルモンが減少し、骨密度が低下することが大きな原因。また、骨を作り出すカルシウムの吸収率が悪くなることも原因のひとつですが、低用量ピルに含まれるエストロゲンは、骨からカルシウムが溶け出すのを防ぐ役割を果たします。そのため、ダブルの効果で骨粗しょう症を予防することができます。
低用量ピルで得られる効果4・美容効果
女性ホルモンであるエストロゲンは、別名「美肌のホルモン」とも呼ばれます。エストロゲンは新陳代謝を高め、肌や髪の毛を美しく保つ作用があります。しかし多ければ多いほどいいというわけではなく、あくまでプロゲステロンとのバランスが大切です。
肌荒れ・ニキビの改善に低用量ピルが効くのはなぜ?
女性ホルモンの分泌量は毎月の生理のほかにも、偏った生活習慣やストレスなどですぐに乱れてしまいます。プロゲステロンが優位に立ったり、全体の女性ホルモン量が減って男性ホルモンの分泌量が優位に立ったりすると、皮脂分泌が増えてニキビや肌荒れの原因となります。
生理前に肌荒れやニキビが起きやすいのも、プロゲステロンの分泌量が増えるためです。低用量ピルを服用してホルモンのバランスを整えることで、ニキビや肌荒れを内側から直すことができます。
多毛症の改善に低用量ピルが効く理由
多毛症とは、何らかの原因で男性ホルモンが増え、全身の毛が太く・濃くなって目立つようになる症状です。治療法のひとつとして低用量ピルが使われることがあり、女性ホルモンの分泌量を増やすことで男性ホルモンの量をコントロールして症状を緩和します。
しかし、多毛症は原因によって治療法も変わります。思い当たる症状がある場合は、まず病院で相談してみましょう。
低用量ピルで得られる効果5・その他の効果
低用量ピルの服用は、生理周期の調整や妊娠しやすい体づくりにも役立ち、生理周期が28日で安定します。飲み方を変えることで、生理周期を調整することも可能です。
生理周期の調整方法
低用量ピルの1シートは、ホルモンを含む薬21錠+プラセボ(偽薬)7錠で構成されています。生理を1週間早めたい場合、14日分飲んだら服用を止めましょう。遅くしたい場合は、21日分飲んだらそのまま次のシートの1錠目を続けて飲みます。旅行や試験などの予定が終わったタイミングで服用を止めれば、通常通り生理が来ますよ。
低用量ピルで卵巣を休ませる!?妊娠しやすい体づくり
意外ですが、不妊症の治療にも低用量ピルが使われることがあります。原因が生理不順の場合は生理周期のコントロールに役立ち、黄体機能不全の場合は子宮内膜の維持・受精卵の着床の助けになります。
不妊症の原因となる子宮内膜症や卵巣嚢腫は、排卵を繰り返すことで進行します。ピルを飲むことで進行を防ぎ、症状をやわらげることが可能です。また、ピルを飲んでいる間は卵巣を休ませることができます。いったんピルを飲んでみて、服用をやめたら妊娠できたという声もきかれます。
低用量ピルで得られる効果はたくさん!ぜひ活用しよう
このように、低用量ピルを服用することで得られる効果はたくさんあります。現代社会では精神的・肉体的ストレスが多く、ホルモンバランスは乱れやすい状態です。特に女性にとって女性ホルモンの影響は大きく、生理痛やPMSなど女性特有の症状に悩まされがちですよね。
もしあなたが悩んでいた症状があるなら、ピルを試してみる価値はあるかもしれません。あなたも低用量ピルで快適な生活を手に入れてみませんか?